RICCAR STORY #08:祖母から父へ、そして孫からRICCARへ。三世代をつないだ足踏みミシン

一台の古いRICCAR足踏みミシンが、神奈川県から私たちのもとへ届きました。
黒いボディに残る金色の「RICCAR」の文字。木製のミシン台、そして鉄製の脚や足元の踏板にもRICCARの名前が刻まれています。
長い年月を経た今も、美しい佇まいを残す一台です。
このミシンを寄贈してくださったのは、神奈川県にお住まいのA様。
最初に私たちへ、こんなご連絡をいただきました。
「使用することもなく、このままでは粗大ゴミとして処分しなければいけません。もし良かったら寄贈させて頂けませんか。」
こうして私たちのもとへやってきたRICCARミシン。
しかし、この一台にはご家族三世代にわたる大切な記憶が残されていました。
昭和20年代、福島で洋裁を学んだお祖母様

このミシンを使っていたのは、A様のお祖母様でした。
お祖母様は結婚する前の昭和20年代、福島で洋裁を学ばれていたそうです。
その後、結婚を機に横浜で暮らし始め、昭和30年代には、このRICCARミシンを使って息子さんたちのシャツやズボンを仕立てていました。
今回A様が私たちに伝えてくださったのは、その息子さん、つまりA様のお父様から聞いていた、このミシンにまつわる思い出です。
お母様がミシンで自分たちの服を作ってくれていた当時のことを、お父様は、
「少し照れくさい気持ちもありましたが、誇らしく思いました」
と振り返っていたそうです。
今のように、欲しい洋服を簡単に手に入れられる時代ではなかった昭和30年代。
家族のために布を裁ち、足踏みミシンを踏み、一着一着の服を仕立てる。
このRICCARミシンは、そんなご家族の日常の中で活躍していました。
小学5年生の夏休み。母から教わったミシン

お父様には、このミシンについて特に忘れられない思い出がありました。
小学5年生の夏休み。
学校の宿題で、枕カバーを作ることになったそうです。
そのとき使ったのが、いつもお母様が家族の洋服を縫っていた、このRICCARの足踏みミシンでした。
お母様から使い方を一つひとつ教えてもらいながらミシンを動かし、無事に枕カバーを完成させることができました。
そのときのことを、お父様はとても嬉しい思い出としてA様に話されていたそうです。
普段は、お母様が家族のために使っていたミシン。
そのミシンに今度は親子で向き合い、母から息子へ使い方が伝えられていく。
お父様にとって、このRICCARは単なる道具ではありませんでした。
「あの足踏み式は、母との大切な思い出です。」
何十年という時間が経っても残っていた、お母様と過ごした大切な記憶でした。
三世代を経て、RICCARへ

時代が移り変わり、この足踏みミシンを使う機会もなくなりました。
大きな足踏みミシンですから、そのまま置き続けることも簡単ではありません。
このままでは粗大ゴミとして処分しなければならない。
そんな状況の中でA様が選んでくださったのが、「RICCARへ寄贈する」という道でした。
お祖母様が使い、お父様の思い出となり、その記憶を娘であるA様が受け継ぐ。
そして今、そのミシンが長い年月を経て、RICCARのもとへやってきました。
「母も喜んでいることでしょう」

A様がお父様から聞いていたお話の最後には、こんな言葉がありました。
「どうぞ大切に。母も喜んでいることでしょう。」
ミシンは、布を縫うための道具です。
けれど、何十年も家族とともに過ごしたミシンには、それだけではないものが残っていくのだと思います。
誰のために何を縫ったのか。
誰から使い方を教わったのか。
そのとき、どんな気持ちだったのか。
一台の古いミシンから、何十年も前の家族の風景が蘇ることがあります。
今回寄贈していただいたRICCARミシンも、お祖母様の手仕事、お父様とお祖母様との思い出、そしてその記憶を大切にしてきたA様の想いを、今に伝えてくれる一台です。
編集後記
昭和20年代に洋裁を学んだお祖母様から始まり、昭和30年代には家族の洋服を作り、小学生だった息子さんへ使い方を伝え、そしてその思い出が娘であるA様へ。
一台のRICCARミシンが、三世代にわたる家族の記憶をつないできました。
そして今回、その大切な一台を私たちRICCARへ託してくださったことを、本当に嬉しく思います。
古いミシンを残すということは、単に「モノ」を残すことではなく、そのミシンとともにあった人々の時間や記憶を残すことなのかもしれません。
お祖母様からお父様へ。
お父様からA様へ。
そしてA様から、RICCARへ。
ご家族の大切な思い出とともに受け継がれてきたこのミシンを、これからも大切に残していきたいと思います。
A様、このたびは大切なRICCARミシンを寄贈していただき、本当にありがとうございました。





